環境問題はなぜウソがまかり通るのか [著]武田邦彦
[掲載]週刊朝日2007年05月25日号
[評者]永江朗
http://book.asahi.com/topics/TKY200705210214.htmlより
気になったので、紹介します。
引用:
■リサイクル論争
4月24日、日本製紙は「古紙100%配合製品を廃止する」と発表した。えっ! リサイクルの時代なのに? と驚愕するニュースである。だが同社のサイトを見て納得した。古紙100%だと製造工程でCO2排出量が古紙を使わないよりも増えてしまうというのだ。業界第1位の王子製紙のサイトにも同様のことが載っている。古紙は7割ぐらいがちょうどいいらしい。
リサイクル100%が必ずしも地球環境にいいとは限らない。イメージや思い込みと現実のあいだにはずいぶんギャップがある。
武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』は、リサイクルが環境にいいと信じて疑わなかった人にとって衝撃の書である。たとえばペットボトルのリサイクルはやめたほうがいいと著者はいう。リサイクルによってゴミは増え、資源の消費も増えたからだ。本書を読むと、リサイクルに回すより、可燃ゴミとして捨てたほうがマシだと思えてくるし、1番いいのは水道水を飲むことだ。
第2章「ダイオキシンはいかにして猛毒に仕立て上げられたか」もショックだ。人類史上、もっとも強い毒性を持つ化合物などと報道されたダイオキシンは、じつのところ毒性も発ガン性もそれほどではないらしい。「燃やすとダイオキシンが出るから」と神経質にゴミを分別していたのはいったい何のためだったのか。
地球温暖化に関する第3章は注意深く読まなければならない。極地の氷が溶けて海水面が上昇するというのはウソだし、温暖化が環境に悪いとは必ずしも言えない。ただし、急激な変化は人類に深刻な影響を及ぼす。しかも、京都議定書ぐらいでは焼け石に水だ。森に木を植えたからといって、CO2が減るわけでもない。
こと環境問題に関しては、倫理的、道徳的に正しそうなことが、環境にもよろしいとは限らないようだ。部分だけ見ると正しそうなことも、全体で考えると間違っていることがある。ゆっくり落ち着いて考えなければ。
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