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1. スタディーツアー「出会いと学びのフィリピン訪問」概要 目的: ? 貧困層への支援をするNGOや農村開発を実践するフィリピンの機関(日本の国際協力のカウンターパート機関)を訪問し、広く国際協力の現場を知る。 ? 「子ども」、「教育」、「都市貧困」、「農村開発」等それぞれが関心のあるテーマを設定しフィリピン社会の現状を学ぶ。
引率者:金刺俊樹 責任者:冨岡 丈朗(日本大学 国際関係学部 准教授) 主な訪問先: NGO ■Options (現地NGO) スラム支援、社会福祉、若者育成 セブ島において、主に都市スラムにおける奨学金制度、障害者支援、若者への保健指導、就労支援などの分野で活動している。スラム出身の若者たちへの法的支援や更生支援活動も実施。 やしの実の会(日本のNGO)は、ここでのスラムにおける奨学金の一部を支援している。
■プルメリア(日本NPO) NPOプルメリアというのは、セブ島で10年近く教育支援に関わるNGO活動をしてきた濱野さんという方に共感した里親や支援者の皆さんが、本当に純粋な気持ちから 日本側で現地活動のサポートをする為に設立した特定非営利活動法人です。現地NGO法人も2008年に正式にプルメリアCEBUと改称し、一人でも多くの 子供達に教育を受けるチャンスを与えることが出来る様に活動している。
2. スケジュール
■スタディーツアー (9月7日?9月13日:6泊7日間) 日程 午前 午後 宿泊先 9月7日(金) 12:00成田空港集合 PL 14:30成田発 18:00セブ着 宿泊先へ傭上バスで移動 ・オリエンテーション (セブ市)
(セブ市) 9月8日(土) ・Options支援現場視察:奨 学生、その家族、近郊村、 スラム訪問 (Bohol- bohol, Paknaan Maguikay) ・Optionsのスタッフと学ん だ事の振り返り ・市内観光 (遺跡、教会)/モール等での買い物 9月9日(日) 自由観光 (セブ市) 9月10日(月) ボホール島へ移動 ・都市と違った生活を体験 (タグビララン市) 9月11日(火) ボホール島観光 (タグビララン市) 9月12日(水) ・自由観光 セブへ移動(夕方の船) (セブ市) 9月13日(木) PL 7:45 セブ発 12:45 成田着
3. スラムの背景
3-1. 貧困とスラム フィリピンの農漁村の現状 ○ 自然災害 (台風、洪水、環境の変化など) ○ 現金収入源が限られている (小規模漁業、農業) ○ 国内産業基盤が未熟 ○ 土地なし農民 ○ 低い学歴 職を求めて都市へ… セブ:ボホール島やネグロス島など周辺の島々から 実際は…安定した仕事はなく、住む場所もない →スラム化(線路沿い、海岸沿い、ゴミ捨て場へ:マージナル・ランド-所有者の居ない土地)、”Urban poor” 都市貧困層 「スクウォッター」(不法居住者)、親族や同郷出身者を頼る、Community形成→人間関係
3-2. ゴミ捨て場における貧困: ○ 直接投棄方式(日本のように燃やさず、全てのゴミは埋め立てる方式) ○ 「スカベンジャー(死肉あさり:と言う意味)」ゴミ拾いで生計を立てる人々のことをフィリピンでは、こう呼んでいる → 目的:ゴミの中からアルミ、鉄などを拾い集めて回収業者へ → 社会サービス(教育、保健医療、住宅など)が受けられない:フィリピンの社会保障制度SSS(Social Security Service)は、居住地域での住民登録と月々の支払が必要→ 故郷にも帰れず定着→貧困の悪循環 → 火災やゴミ山が崩れる事故、犯罪、危険と隣り合わせの暮らし ○ 違法占拠の問題 → 政府からの強制退去、移住 (収入源がない、廃品回収人からの失業) トンド地区「スモーキー・マウンテン」 (1993閉鎖)=アジア最大のスラム in マニラ市 → 閉鎖後、周辺地域へ → パヤタス in ケソン市に拡張
3-3. 考察ポイント: ○なぜスラムが出来たのか? ○なぜスラムの人達はスラムで暮らし続けるのか? ○なぜメディアはフィリピンのゴミ山を取り上げるのか? ○なぜ日本人はゴミ山に行くのか?
3-4. 各種支援 Options:保健医療分野、教育分野、奨学金、職業訓練、障害者への支援
4.セブの概要
フィリピンは7000以上の島からなる島嶼国家である。この国は、北から大きくルソン、ビサヤ、ミンダナオの三つの地域に分かれている。首都マニラの南方500キロに位置するセブ島は、ビサヤ地方の中心地として歴史上重要な役割を果たしてきた。1521年、マゼラン率いるスペイン艦隊が訪れ、フィリピンに初めてキリスト教を伝えたのも、ここセブ島での出来事である。現在も南フィリピンの経済的・文化的中心地として、また国際的なリゾートとして繁栄し、毎年多くの外国人観光客を迎えている。近年、目立つのが韓国人の語学留学の増加である。高等教育を受けたフィリピン人は流暢な英語を話し、また他の地域に比べて治安がいいので、安価に英語を学ぼうとセブを訪れている。 セブ市では、330平方キロに約66万人が居住している。海岸沿いの平地が都市部であり、ここに人口の8割が集中している。都市部の人口密度は1平方キロにつき1万人を超えており、とても高い。後背地には273平方キロの丘陵部が広がっているが、その人口は全体の2割にすぎない(Etemadi 2002 p.8-10)。 セブの都市部の特徴は、貧富の差が激しいことである。急速な産業化と都市化が進み、観光地としても栄えているセブには、「ビバリーヒルズ」と呼ばれる超高級住宅街で、雇い人に囲まれて暮らしているお金持ちもいる一方で、人口の半分以上は極端に貧しい生活をしている。観光客向けの高級ホテルの目の前や、高額所得者が住む警備員付きの住宅街の丘の下に、掘っ立て小屋が連なる地区が、セブには点在している。住民は、居住する土地を不法に占有している状態がほとんどであり、このような地域に居住している貧しい人々のことをスクオッターと呼ぶ。不法に土地を占拠しており、行政への登録も未提出のためにそのサービスもほとんど受けられない状況である。
セブ市の失業率は、16%という高い数字となっている(1999年)。近隣の地方からセブに出稼ぎに来ても、教育を受けていない人は、英語が話せなかったり、事務ができなかったりという理由で観光産業や銀行、不動産、保険などの主要なサービス業で働くことはできない。路上で物を売ったりするインフォーマルセクターで働き、収入も不安定である。このため、貧困の状態からはなかなか抜け出すことができない。
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